取材先:愛明商店 木村社長
(名古屋市中央卸売市場/水産・仲卸)
今回、社長にインタビューを
させていただくのは、
名城大学の大野祥平です。
よろしくお願いします!
一発勝負の競りに潜む「心理戦」
前回の取材でいちばん驚いたのが、「一発で値段が決まる」という競りの仕組みでした。やり直しがきかない一瞬に、何を見て、何を賭けているのか。まずはそこから伺いました。
競りは一発勝負だと伺いましたが、実際にはどういう駆け引きがあるのでしょうか。
安く買おうとスケベ心を出すと他所に持っていかれるし、意地になって出しすぎてもいけない。だから、他の仲卸さんが日頃どんなマグロを狙っているか、いつも見ているんですよ。
「あの人が好きそうなマグロだから、ここは強く行こう」とか、「ここは入荷が多いから、今日は抑えよう」とか。一瞬の判断ですけど、そこに全部が詰まっています。
コラム一瞬の判断が命運を分ける。「一発競り」の緊迫感と仕入れの知られざるドラマ
「競り(せり)」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、セリ人の威勢の良い掛け声に合わせて買い手が次々と値を上げていく光景ではないでしょうか。
しかし、築地や豊洲、そして名古屋などの水産市場のせり場には、たった一度の手やりや数字の提示で勝敗が決まる「一発競り(一回入札)」という過酷なルールが存在します。なぜこの方式が採用され、プロたちはどのような心理戦を繰り広げているのでしょうか。
一発勝負の「一発競り」vs 競り上げる「オークション方式」
一般的に馴染みがあるのは、低い価格からスタートして順に競り上げていく「イングリッシュ・オークション(競り上げ方式)」です。美術品やネットオークションなどでよく見られる方式で、お金を出せば出すほど落札確率が上がります。
一方、水産市場で多く採用されている「一発競り」は、参加者が提示できるチャンスがたったの1回のみ。全員が同時に金額を開示し、最も高い値をつけた人が一発で落札します。
この方式の特徴は、強烈なジレンマと心理戦にあります。「確実に落としたいが、高すぎる金額を出して損はしたくない」という一発勝負特有の緊張感が生まれるのです。
なぜ名古屋の市場で「一発競り」が定着したのか?
「一発競り」が定着した背景には、その土地ならではの歴史的・流通的な事情が深く関わっています。
かつて名古屋の市場は、日本でもトップクラスの「生のキハダマグロ」消費量を誇っていました。競り場には連日、膨大な数のマグロが所狭しと並んでいたといいます。
「昔の名古屋は生のキハダマグロが日本一消費されていて、競りの量もすごい並んでいたんですよね。もしあの数をオークション方式で一つひとつ競り上げていたら、何時になっても終わらない。だからこそ、一発競りになったのだと思います」
スピードと鮮度が命である水産物流において、膨大な数を効率よく捌くための合理的なシステムとして「一発競り」が選ばれてきたのです。
一瞬の迷いが命取り。仕入れのプロが直面するリスク
しかし、買い手である仲卸や仕入れのプロにとって、一発競りは常にリスクと隣り合わせの真剣勝負です。
値段が語る、産地と物流のリアル
今、マグロの値段自体はどう動いているんでしょうか。
実は今、マグロはすごく安いんです。夏場で脂も乗っていない時期で、数はたくさん上がっている。
メディアでは「大漁だ」なんて言われますけど、僕らが本当に見ているのは中身、つまり品質なんですよね。同じ200キロのマグロでも、単価1,000円のものもあれば、何百円というものもある。
産地からここに届くまでにも、いろいろな事情があるとお聞きしました。
ありますね。例えば沖縄のマグロなどの空輸は、社会情勢による運賃変動の影響を大きく受けます。実は、中部に直接届けるルートだけでなく、関西国際空港や成田空港を経由して陸送で名古屋へ届ける方が、トータルでコストを抑えられ、安定した価格でお届けできるケースも多いんです。
一方で、宮崎のようにトラックで運べる産地でも、ドライバーさんの労働時間規制(いわゆる2024年問題など)があり、名古屋まで運べる距離や時間の制限がシビアになってきています。
天候も同じです。台風はもちろん、地震で津波警報が出ると、船は岸壁にいると損傷するので沖合に避難してしまい、水揚げそのものが止まる。だから僕らは、全国の物流ルートや天候の動きまで見越して、「どこからどう仕入れるのが最善か」を毎日判断しているんです。
コラム遠回りするほうが安い?マグロの値段に隠された物流ルートの話
「今の時期(7月14日取材)、マグロが大漁です」——そんなニュースを聞くと、素直に「じゃあ安くて美味しいマグロがたくさん食べられるのかな」と思っていました。でも今回、市場で働く方に話を伺って、その考えはあっさり覆されました。
実は、季節的にマグロの価格自体は今下がっているそうです。ただ、夏場のマグロは脂が少なめ。同じ200kgのマグロでも、品質によって1kgあたり1,000円の値がつくものもあれば、数百円にとどまるものもあるというから驚きました。「大漁=すべて高品質」というわけではないんですね。
さらに驚いたのが、私たちが口にするマグロの値段には、魚そのものの価値だけでなく「どう運ばれてきたか」という物流コストが大きく関わっているという話でした。
地元の空港じゃなくて、あえて「遠くの空港」?
愛知県には中部国際空港(セントレア)と、県営名古屋空港(通称:小牧空港)の2つの空港があります。北部市場へのアクセスだけを考えたら、小牧空港のほうが目視できるくらい近いそうです。でも小牧空港には今、国際線がない。
じゃあ海外から届くマグロは全部セントレアに届くのかと思いきや——実はそうとも限らないというから、正直びっくりしました。
「中部エリアに届けるならセントレアが一番安いのでは?」と思ってしまいますが、航空運賃は社会情勢や便数によって大きく変わるそうです。そのため、一度「関西国際空港」や「成田空港」に降ろして、そこからトラックで名古屋まで陸送したほうが、トータルのコストを抑えられて価格も安定するケースが多いそうです!
一見、遠回りして余計にコストがかかっているように見える裏に「一番安く・安定して届けるための、緻密な迂回ルート」が隠れているなんて、考えたこともありませんでした。市場で働く人たちは、ニュースから明日の仕入れルートまで読んでいるんだな、と思うと、プロの視点ってすごいなと感じました。
陸にも「2024年問題」と自然災害のリスク
物流の壁は、空だけの話ではないそうです。宮崎などから陸路で運ぶ場合も、近年のドライバーの労働時間規制、いわゆる「2024年問題」によって、以前のように長距離を一人のドライバーで一気に運ぶのが難しくなっているとのこと。
さらに、台風はもちろん、地震による津波警報が出れば、船は港での損壊を防ぐために一斉に沖合へ避難して、水揚げ自体がストップしてしまうそうです。
競りで目にするマグロの価格には、単なる「魚の値段」だけじゃなくて、航空運賃の変動、陸送の距離規制、天候リスクまで全部計算しつくした「プロの仕入れの判断」が詰まっているんだって。正直、今まで魚の値段って「鮮度」とか「大きさ」でしか考えたことがなかったので、これは本当に目からウロコでした。
次にマグロを食べるとき、つい「このマグロ、どんなルートで来たんだろう」って考えてしまいそうです。取材のあとも気になって、空港と市場の位置関係をつい地図で調べてしまいました。今度は実際にセントレアや小牧空港も見に行ってみたいです。
頭の中で描くパズル。一匹のマグロを無駄にしない目利き
愛明商店さんは、お寿司屋さんだけでなく、イタリアンや喫茶店、お好み焼き屋さんまで、本当に幅広い業種のお客様とお取引があるとお聞きしました。
それが僕らの強みだと思っています。マグロは一匹丸ごと仕入れるので、お寿司屋さんの欲しい部位だけを売っていたら、尻尾の方や筋のきついところがどうしても余ってしまう。
でも、お好み焼き屋さんなら中落ちの需要がありますし、創作料理のお店には「筋のあるところも、火を入れれば柔らかく美味しく使えますよ」と提案できる。仕入れの時点で、もう頭の中で「このマグロのこの部分は、あのお客さんへ」とイメージしながら振り分けているんです。
業種が広がれば広がるほど、いろんなマグロを、無駄なく、みんながウィンウィンになる形で届けられる。これは産地から直接届く流通では、なかなかできないことだと思っています。
仕入れの時点で、もう頭の中で「このマグロのこの部分は、あのお客さんへ」とイメージしながら振り分けているんです。
― 愛明商店 木村社長コラム皆さんご存じですか!?「赤身・中トロ・大トロ」の違い
マグロの中で最も価値が高いとされるのが、お腹側にある「大トロ」です。きれいに白く脂が入っているのが特徴で、一口食べれば豊かな旨みと脂の甘みが広がります。
そこから赤身へと移るにつれて「中トロ」、そして脂が少なくマグロ本来の味わいが楽しめる「赤身」へと変化していきます。
大トロ:一番価値が高く、脂が一番乗っている部位。
中トロ:赤身と脂のバランスが絶妙な部位。
赤身:さっぱりと味わえる部位。
ちなみに、「脂っこいものが体に受けつけなくなってきた…」というプロの仕入れ手自身は、普段食べるときは脂控えめな「赤身」を選ぶこともあるそうです。
「今日はありません」が信頼の証。お客様に寄り添う仕入れ
長くお付き合いされているお客様からの信頼を、どうやって築いてこられたのでしょうか。
一番は、お客さんの顔を見て商売ができることだと思っています。今は電話やメール、LINEで注文が完結してしまう時代ですが、それだとどこか冷たいんですよね。
対面だからこそ、「今日のは良かったよ」と言ってもらえると本当に嬉しいし、「今日のはダメだったよ」とお叱りをいただいたときは、自分の勉強のために、極力お店の厨房まで見に行くようにしています。
印象的だったのが、あえて売らないという選択をされることがあるというお話でした。
ありますね。「すみません、今日はお勧めできるマグロがありません」と。マグロは生き物なので、下ろしてみたら中が真っ黒で、何十万円もの損失が出ることもあります。
それでも、お客さんがどうしても欲しいと言うからと中途半端な品質のものを意地で仕入れても、結局誰も喜ばないんですよ。品質も値段も良くないものを出すくらいなら、正直に「ありません」と言う。それが、長く付き合っていただくためには一番大事だと思っています。
コラムプロでも「切るまで分からない」という恐ろしさ
もうひとつ、思い込みが覆された話があります。私は正直、市場で働いている方は「見た目や触ってみた感触だけで品質を見抜けるものだ」と思っていました。ところが実際は、包丁を入れて切り分けてみるまで、絶対に見分けられないリスクがあるということから、正直びっくりしました。
その正体が、マグロの内部でひっそりと起きる肉質劣化 -「ヤケ」と「黒変(血回り)」です。
ヤケ:釣り上げられる際に激しく暴れて体温が40度近くまで急上昇し、筋肉内に乳酸が大量に蓄積される現象。身が白っぽく濁り、お刺身にするとパサパサで強烈な酸味が出てしまうそうです。
黒変(血回り):捕獲時の衝撃や暴れで毛細血管が破れて内出血したり、血抜きが不十分で血液が留まる現象。時間が経つと血液や色素(ミオグロビン)が酸化して、身の中心部がどんよりと黒く変色してしまうとのこと。
なぜプロの目でも見抜けないのか。理由はシンプルで、「ヤケも黒変も、皮や脂に覆われた骨の周囲や腹の奥から発生するから」なんだそうです。競りの段階ではマグロに包丁を入れて中を確認することはできないので、尻尾の断面がきれいに澄んだ赤色でも、お腹の奥や背中の中心部だけが真っ黒に焦げていた、ということがよくあるとお聞きしました。
そのため、手触りや、尾切りの血合い、さらに季節や漁獲方法といった、かすかな兆候からリスクを予測しているそうです。それでも、あくまで「確率の推測」でしかなく、完全に見抜くことは不可能なんだとか。
「楽しさと責任」を交えて託す、次世代への継承
木村社長ご自身が競りを任されるようになるまで、どれくらいの期間がかかったのでしょうか。また、次のスタッフに任せる際、どんなことを意識されていますか。
これは本当に人それぞれだと思います。最初からできる人なんていないので、どれだけ失敗して、どれだけそれを身につけるか。100人いたら100人、見ているところが違うので、「ここさえ見ておけばいい」という定義もないんですよ。
だから、失敗して当たり前だと開き直る人には任せられないし、逆に責任を持ってやってくれる人には、少しずつ楽しさも織り交ぜながら任せていきたいと思っています。
今もマグロの担当が僕を含めて、生のマグロと冷凍のマグロで分かれていますが、値段の上限を決めて縛るようなことはしていません。「いくらまでで買え」とやってしまうと、いいものが買えなくなってしまうので、そこは信頼して任せる。
人によって同じ魚を見ても評価が全然違うんですよね。それも含めて、経験を積んでもらうしかないと思っています。
大きな失敗談はありますか。
自分がいいと思って買ったマグロが、下ろしてみたら全く使い物にならなかったこと。これは正直、何回もありますよ。何十万円という損失になることもあります。
でも、これは切り分けてみないと分からない部分もあって、本当に日々勉強なんです。マグロも1匹1匹、人間と同じで一つとして同じものはないので、たまに裏切られることもあります(笑)。
社長の1日、そして先代との出会い
先代から会社を引き継がれて4年ということですが、そもそものきっかけを教えていただけますか。
僕がこの仕事に入ったのは20代前半です。もともと色々な仕事をしていたんですが、先代の社長に「やってみないか」と誘われたのがきっかけでした。まさか自分が30年もこの仕事を続けるとは、当時は思ってもいませんでしたね。
最初の頃は、朝起きるのが本当に辛くて。遊びたい盛りでしたから、寝ずにそのまま仕事に来ることもありました。今では絶対にダメですけどね(笑)。
現在の1日のルーティンも教えてください。
DIARY
社員が6人、アルバイトが4人おりますが、こうした人たちの雇用を守り、次の世代にきちんと技術を引き継いでいくことも、自分の大事な役割だと思っています。
歓喜と絶望―飲食店と命運を共にした「光」と「影」
これまでで一番印象に残っているエピソードを伺えますか。
7年ほど前になりますが、自分が下ろさせていただいているお店が、東海版のミシュランガイドで星を取ったんです。授賞式のあと、そのお店の店主さんからわざわざ直接お電話をいただいて、「星取ったよ」と。あのときは、自分のことのように本当に嬉しかったですね。
自分のマグロのおかげとまでは言いませんが、お付き合いのあるお店が行列のできる話題のお店になっていく瞬間に立ち会えるのは、この仕事の醍醐味だと思っています。
一方で、大変だった時期もあったと思います。
コロナ禍は本当に厳しかったです。うちはお客さんの多くが飲食店だったので、休業や時短でダメージが大きくて、売上も大きく落ち込みました。学校給食や保育園の注文も止まりましたし、ホテルの宴会も旅館の宿泊も全部止まった。
あのときは、目の前で注文をくださるお客さんを大事にしながら、なんとか潰れずに凌ぐしかなかったですね。
そこで挑戦したのが、一般消費者向けのECサイトでした。全国の個人の方から注文と一緒に、「頑張ってください」という温かいメッセージがたくさん届いて、本当に励まされました。
解体ショーが繋ぐ、新たな出会い
最近力を入れていることがあれば教えてください。
企業のパーティーやゴルフの大会などで、マグロの解体ショーをやらせていただく機会が増えています。この間も、南知多で行われたゴルフのプロ大会の余興として呼んでいただきました。
お取引先のお寿司屋さんも一緒に連れて行って、捌きたてのマグロをその場で握ってもらうんです。
190人規模のパーティーでも大盛況でした。僕自身、マグロを担いだりしながら、結構楽しんでやっています(笑)。
こういう場から「うちの店にも来てほしい」というお声がけをいただくこともあって、新しいお客さんとのご縁にも繋がっています。
コラム巨大なマグロを目の前で捌く!迫力満点の「マグロ解体ショー」
皆さんも一度は「マグロの解体ショー」という名前を聞いたことがありませんか?おめでたい席やイベント、ホテルの宴会などで大盛り上がりを見せます。実際にどんなことをするのかを調べてみました!
マグロ解体ショーでは何をしているの?
実際には、ただマグロを捌くだけでなく、以下のような演出や流れで会場が盛り上がります。
1. 巨大マグロの登場・担ぎ込み
数十キロ〜100キロを超える本マグロなどを職人が担いで登場し、会場を一気に沸かせます。
2. 各部位の解説と「目利き」の披露
「ここが大トロです」「この部位は火を通すと美味しいんですよ」など、プロの仲卸ならではの知識を交えながら、部位ごとの特徴をわかりやすく解説します。
3. 豪快な包丁さばき(解体)
マグロ専用の大きな包丁を使い、部位ごとに見事な手際で一匹のマグロを切り分けていきます。
4. さばきたて・握りたての提供
解体されたばかりの超新鮮なマグロを、その場で刺身やお寿司にして来場者に振る舞います。
会場全体が一体となって楽しめる人気のイベントです。
仲卸が選ばれる理由
産地直送という言葉もよく聞くようになりましたが、仲卸の役割についてどうお考えですか。
産地直送も、それはそれで大事だと思っています。彼らにも生活がありますし、悪いことだとは思いません。ただ、産地から直接、丸ごとマグロが届いたところで、使い切れるお店ならいいですが、使い切れないお店だとお荷物になってしまうんですよ。
僕らの役割は、お客さんに合ったロットで、好きな部位を届けられること。これは産地直送では絶対にできないことだと思っています。
それに、電話やSNSの注文だけでは築けない信頼関係も、僕らの強みです。実際にお店に足を運んで、店主さんや仕入れ担当の方と直接お話しして、「一度うちのを使ってもらえませんか」とお願いする。
そこから、料理人さん同士の横のつながりでご紹介いただくことも多いんです。「最近マグロが良くないんだよな」という一言から、ご縁をいただくこともあります。
コラム産地直送と仲卸は相反する?「直接届く良さ」と「繋ぐプロ」それぞれの役割
近年、飲食店やスーパーの仕入れにおいて「産地直送(産直)」という言葉をよく目にするようになりました。「産地から直接仕入れた方が安くていいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。私もその一人でした。
しかし、毎朝市場でマグロと向き合う仲卸のプロに話を聞くと、両者は決して「敵対するもの」ではなく、それぞれ異なる役割と強みを持っていることが見えてきました。
「産地直送」のメリットと、現場で生じる「お荷物」問題
産地直送の最大の強みは、産地と買い手が直接つながるシンプルさにあります。仲介コストを削れたり、特定の産地をブランディングしてアピールできる良さがあり、漁師さんたちの生活を支える大切な流通ルートの一つです。
しかし、飲食店が産地から「マグロ一匹丸ごと」を直接買い取った場合などでは、多くのお店にとっては、丸ごと届いた巨大なマグロを捌く手間や、使い切れない部位の保管・処分が重荷になり、「せっかくの産直がお荷物になってしまう」というケースが少なくありません。
仲卸の真価:「必要な部位を、最適なロットで届ける」
ここで重要になるのが「仲卸」の役割です。
仲卸は、競りで一匹丸ごと仕入れたマグロを、多様なお客さんの要望に合わせて解体・選別し、「必要な部位を、使い切れる量だけ」届けています。
お寿司屋さん:お刺身用の極上な「大トロ・中トロ・赤身」
お好み焼き屋さん:旨味が詰まった「中落ち」
創作料理店:加熱調理で柔らかくなる「筋の強い部位」
一匹のマグロを仕入れても、多様な顧客を持っている仲卸だからこそ、部位ごとに無駄なく振り分けることができます。これは、産地から直接一括で届くルートでは絶対に真似できない「仲卸ならではの強み」です。
10年後の北部市場へ ― 若い世代への言葉
最後に、10年後の北部市場、そして愛明商店さんの姿を、どのように思い描いていますか。
もっといろんなお店に納品したいですし、今はまだ気づけていない部分もたくさんあると思っています。飲食店さん以外にも、ネット販売の分野にはもう少し力を入れていきたいですね。
それと、これから一緒に働いてくれる若いスタッフを増やしていきたい。
仲卸という仕事は、自分の目利きで魚を見て、競りで買って、自分の手で売る。値段だって自分で決められる。「良かったよ」「美味しかったよ」とお客さんから直接言ってもらえる、これに勝る魅力はないと思っています。
若手や後継者を目指す方に向けて、メッセージをいただけますか。
漁師さんが海で命がけで獲った魚が、浜に上がって、中央卸売市場に届いて、僕らが買って、そこから飲食店やスーパーへと渡っていく。このバトンの中で、仲卸というのは、いわば最後のパスを出す「アシスト役」なんです。
主役である飲食店というフォワードが、最高のゴール、つまり美味しい一皿を決められるように。そしてその先にいる、何百人、何千人ものお客さんが喜んでくれるように、ドンピシャなマグロを供給する。
もし僕が変なマグロを納品してしまったら、その先にいるすべての人に迷惑がかかってしまう。だからこそ、極力お客さんの期待に応えられるように、これからも努力していきたいと思っています。
仲卸というのは、いわば最後のパスを出す『アシスト役』なんです。
― 愛明商店 木村社長取材を終えて
正直に言うと、今回の取材は「知らなかった!」の連続でした。空港ひとつで生鮮物流が変わってしまうことも、同じ200キロのマグロなのに値段が何倍も違うことも、お店に並んだマグロを見ているだけでは絶対に気づけなかったと思います。中でも一番心に残っているのは、木村社長が言っていた「仲卸というのは、いわば最後のパスを出す『アシスト役』なんです。」という言葉です。表には出ない仕事だからこそ、こんなに熱く語れるのがすごくかっこいいなと素直に思いました。
北部市場では今、こうして働く方々の姿を発信するプロジェクトを進めています。この記事を読んで少しでも愛明商店さんが気になった飲食店の方、市場で働くことに興味を持った方は、ぜひ一度北部市場に足を運んでみてください。木村社長みたいに、顔が見える距離で、想いを持って仕事をしている人たちに、きっと出会えると思います。
| 取扱 | 生マグロ・冷凍マグロの仕入れ・卸売 |
|---|---|
| 取引実績 | 飲食店様100店舗以上 |
| その他 | マグロ解体ショーのご相談も承ります |
まずは一度、愛明商店へ相談してみてください。
北部市場の活動については、特設サイト・SNSでも随時発信しています。