活動報告

【活動報告】スーパーに並ばない野菜!?青果部門の撮影に行ってきました!

はじめに

きゅうり、じゃがいも、ほうれん草、トマト——スーパーの野菜売り場に並んでいるものは、どのお店でもだいたい同じです。

正直に言うと、市場とは「そのよく売れる野菜が、日本中から大量に集まってくる場所」だとばかり思っていました。効率よく、たくさん動くものが集まる場所なんだろう、と。

でも、実際に見せていただいた棚にあったのは——愛知県内で作っている人が一人しかいない花。注文が少ないと分かったうえで、それでも毎回仕入れている唐辛子。そして「認知度が低くて、なかなか売れないんだよね」というカボチャでした。

北部市場の青果売り場に積まれた段ボールとスタッフの様子

花ズッキーニ|愛知県で作っているのは、一人だけ

最初に手渡されたのは、大きな黄色い花でした。「ズッキーニって、かぼちゃの仲間だって聞いたことある?」——知りませんでした。並べて見比べると、確かにかぼちゃの花にそっくりで、その付け根に小さなズッキーニがついています。

花の中には、なぜかスポンジが詰められていました。理由を伺って納得しました。ズッキーニの花は朝の一瞬しか咲かず、放っておくとすぐに萎んでしまう。だから咲いた朝にスポンジを入れて、開いた形のまま出荷するのだそうです。

そもそもこの花は、中に詰め物をして食べるもの。魚のすり身やお肉を詰めて、フリッターにしたり、焼いたり、蒸したり。ヨーロッパではごく普通の料理だと聞きました。日本で流通しているのは実のついた雌花が中心ですが、向こうでは花粉の出る雄花も食べるのだそうです。

そして、この花ズッキーニを愛知県内で作っているのは、80歳を超える農家さんただ一人。「荷物が来ないなと思ったら『ちょっと腰が痛くて今日は出せんかったわ』って」——日によって入ってきたり、入ってこなかったり。なぜ一人しかいないのか。返ってきた答えは、とてもはっきりしていました。「なんで一人かって、売れないから」

珍しい野菜たち|「売れない」と分かっていて、それでも並べる

棚を一周させていただくと、名前も知らない野菜が次々に出てきました。

アロエベラは、ヨーグルトでおなじみの葉が、腕ほどの太さでゴロンと置かれています。生のままだと苦みがあって食べにくく、下ごしらえも大変。「大変な割に売れないんだよね」と笑っていらっしゃいました。それでも先日、市内の温泉施設様から「アロエ風呂をやるので欲しい」というユニークな注文が入ったそうです。

シーアスパラガス(日本名・アッケシソウ)は、塩田のそばに自生する野菜だと聞いて、その場で一本いただきました。噛んだ瞬間、ガツンと塩の味がします。塩気の強い土でも育つ、その土地の記憶がそのまま味になっているようでした。

切ってみるまで分からない野菜も並んでいました。外側は普通の大根なのに、中の芯が鮮やかな赤い紅心大根。断面が白と赤の縞模様になっているキオッジャというビーツ。ただしこの縞模様、加熱すると消えてしまうため、生でスライスしてサラダにするのが向いているのだそうです。じゃがいもも、中がピンクのノーザンルビー、紫のシャドークイーン「スライスして色を重ねればミルフィーユになる」——想像すると、確かに美しい一皿です。

バターナッツカボチャは、種が下のふくらみの部分にしかないので、ほとんど捨てるところがありません。きめが細かく、スープにもソースにもお菓子にも天ぷらにもできる。それでも「認知度が低いんだよね」と苦笑いでした。

なぜ、売れにくいと分かっているものを並べ続けるのでしょうか。伺うと、理由はシンプルでした。作ること自体が難しいわけではない。ただ、作る量が少ないぶん普通の野菜より値段が高くなり、しかも使い方が知られていないから、一般のご家庭には届かない。だから買い手はどうしても飲食店やプロの方が中心になる——そのうえで、「こういうのが売れると楽しいな、と思ってやってるんです」

売れる見込みで選んでいるのではなく、面白いから置いている。そんな現状に驚愕でした。

市場で珍しい野菜を試食する様子

21歳の競り|一ケースごとに、生産者の生活がかかっている

同じ日、競り場ではもう一つの取材をさせていただきました。産地から届いた野菜や果物に、その日の値段をつけて売る卸売会社・セントライ青果の鈴木様。21歳、入社2年目で、静岡県産のクラウンメロンとアローマメロンを担当されています。農業系の専門学校で果物を育てていた経験から、「中部地方で一番大きい市場なら、いろんなものを扱える」と思って入社されたそうです。

一日は朝6時から始まります。競りの準備をして、市場の中で野菜や果物を買い取り、スーパーや飲食店に届ける仲卸業者の方々のところを回り、「今日はこれくらいの値段で買ってほしい」と伝えて歩く。7時半から競売、終わり次第「誰がいくらで買ったか」を一覧にして引き渡し、9時に事務所へ戻って産地へ結果を報告する。そして翌日の入荷分の注文をまとめていく。

競りの前に値段の話をして回る、という工程が意外でした。理由を伺うと、「本当は世間の相場が一万一千円なのに、五千円、六千円で買われてしまうと、産地から荷物が来なくなってしまうんです」。値段は、その日の売上の話では終わらない。安すぎれば、産地はもうこの市場に出してくれなくなる。

競り台に立った鈴木様は、一万一千円、一万四千円、一万六千円と、こちらが目で追えないスピードで値をさばいていきます。指のサインは1から9まで決まっていて、指を振る動きは同じ数字が並ぶこと——たとえば1が2つで一万一千円を意味するのだと教えていただきました。仲卸の方は3人。全員のサインを同時に見分けるコツを尋ねると、「まあ、慣れですよね」と笑っていらっしゃいました。

一番責任を感じる仕事は何ですか、と伺ったときの答えが、この日いちばん忘れられない言葉になりました。「生産者さんの生活だとか、今後の生産量に直結しますので、一ケース一ケース責任を持って値段をつけています」

ちなみに、入社して初めて知って驚いた市場の言葉は「端端期(はしかいき)」。産地と産地が切り替わる時期で、入荷が急に減り、値段がぐっと上がるタイミングを指すそうです。

競り場でセントライ青果の鈴木様を取材する様子

市場を動かしていたのは、仕組みではなく人

市場は、売れるものを効率よく流す場所だと思っていました。

でもこの日出会ったのは、売れないと分かっていても「面白いから」と珍しい野菜を並べ続ける方と、一ケースごとに産地の生活を思い浮かべながら値段をつける21歳の方でした。どちらも、効率だけでは説明のつかない仕事です。市場を動かしているのは仕組みではなく、人の判断なのだと知りました。

同時に、宿題も持ち帰りました。バターナッツカボチャも、紅心大根も、シーアスパラガスも、「知られていないから売れない」。それなら、知ってもらうことは私たちにもできるはずです。花ズッキーニの中にスポンジが入っている理由を、この記事を読むまで誰も知らなかったように。

撮影した映像は、これから北部市場のSNSで順次公開していきます。スーパーでは出会えない野菜たちと、その値段を決める現場の空気を、ぜひ楽しみにしていてください!

応募・お問い合わせは Instagram の DM から受け付けています。

名城大学 4年 大野祥平