活動報告

【活動報告】市場の熱気を体感!北部市場で「競り」の見学を行いました

はじめに

今回は早朝の北部市場を訪れ、食の流通の最前線である「競り(せり)」の見学を行いました。

まだ外が暗い時間帯にもかかわらず、市場内はすでに全国から集まった新鮮な野菜や果物、鮮魚、そしてプロの買い手の方々で熱気にあふれていました。

本記事では、その日に見て、聞いて、感じたことをできる限り詳細にお届けします。北部市場の魅力と課題、そしてこれからの活動への想いをあわせてご覧ください。

北部市場って、どんな場所?

まずはじめに、北部市場についてご説明します。

北部市場は、名古屋市の北部に位置する大規模な卸売市場です。水産物(魚介類)と青果(野菜・果物)の両部門を持ち、中部圏の食を支える物流の要として、毎日膨大な量の生鮮品がここを行き交います。

驚くべきは、その規模感です。北部市場で働く人の数は、なんと約5,000人。飲食店やスーパー、八百屋、居酒屋—私たちの食卓に並ぶ魚や野菜の多くが、この場所を通って届けられています。
まさに「食の社会インフラ」と呼ぶにふさわしい存在です。

しかし、多くの市民にとって、卸売市場は縁遠い存在かもしれません。スーパーで魚を買うとき、
その魚がどこからどのように運ばれてきたのか—市場という中継地点の存在を意識することは、
日常ではほとんどないでしょう。なごがくとなごめが取り組む「北部市場SNS運用プロジェクト」は、
まさにそのギャップを埋めることを目指しています。

市場の仕組み——生産者から消費者まで

今回の見学に先立ち、私たちは市場の基本的な流通構造についてレクチャーを受けました。
これがまた、目からうろこの連続でした。

市場の流れを簡単に整理すると、次のようになります。

生産者(農家・漁師)→ 卸売業者(全国から集荷)→ 仲卸業者(売り先を探す)→ 小売業者(八百屋・スーパー・飲食店)→ 消費者(私たちの食卓)

この流れを見ると、卸や仲卸が流通を支える重要な存在であることがわかります。
しかし実態は、決して楽なポジションではありません。

生産者は「安定した高値で買い取ってほしい」という強い立場を持ち、消費者・小売業者は
「できるだけ安く良いものを」という力を持つ。そのあいだに挟まれた卸・仲卸は、まさに「板挟み」の
状態です。

販売手数料は法律上は自由化されているものの、商習慣でほぼ7〜8%に固定されています。
高く買って安く売らざるを得ない場面もある、という現実があります。

さらに、せりの前段階では生産者に支払う金額が確定していません。せりで成立した価格から手数料を差し引いて初めて支払い金額が決まるため、仮に安値でせりが決着してしまうと「次から出荷してもらえなくなる」という取引上のデリケートな心理戦も生じているとのこと。単純な価格競争ではなく、長期的な信頼関係の積み重ねが市場を動かしているのです。

また、2020年(令和2年)の卸売市場法改正により、卸売業者が仲卸を通さずに小売業者へ直接流通させることも可能になりました。デジタル化の進展や大手小売業者の寡占化も相まって、市場を経由しない流通ルートも増えています。

商売でありながら、食料流通という高い公共性を持つために行政も深く関わる—北部市場が今、時代の変化の中でどのような役割を担うべきかが、改めて問われている局面にあります。こうした複雑な構造の中にあって、北部市場が担う役割を「誰が・何を・どう支えているのか」という形でSNSを通じてわかりやすく可視化していくことが、私たちの使命だと実感しました。

現場のリアル① 水産のせり

午前3時45分、まず向かったのは水産部のせり場です。

せり場に足を踏み入れた瞬間、その空気に圧倒されました。冷んやりとした空気の中、場内は煌々と照明が灯り、すでに多くの関係者が慌ただしく動き回っています。床には発泡スチロールの箱が整然と並び、その中には先ほどまで海を泳いでいたはずの魚たちが収められています。

せり前の「品定め」という仕事

せりが始まる前には、仲卸の担当者たちが品定めを行う「前見」という準備があります。せりが始まる前に、ざっと品物を見回り、今日のお目当てや値段感の目安をつけておくのです。この段階での情報収集が、せりの本番で素早く動くための下準備になります。

「せりが始まったら、一瞬も目が離せません」

現場のスタッフがそう語ってくれました。実際にせりが始まると、せり人(競売人)の声が場内に響き渡り、仲卸の担当者たちが矢継ぎ早に手を挙げたり、指でサインを出したりして競り合います。その刻みは約100円単位。一見すると小さなように思えますが、まとまった量の魚を何十回とやり取りする中では、ひとつひとつの判断が積み重なって大きな差になります。

マグロの入荷量と市場のスケール感

この日の北部市場には、マグロが通常どおり50〜60本入荷していました。マグロは特に価格変動が大きく、その日の漁獲量や市場の需要によって値段が大きく動きます。せり人とバイヤーのやり取りには、プロだけが持つ独特の緊張感がありました。

活魚は専用の水槽を積んだトラックで運ばれてきます。魚は北部市場に到着したあとに「締め」の処理を行って提供されます。鮮度を最大限に保つための、現場ならではの工夫です。

業態別に分かれたせり場

興味深かったのは、せり場のゾーニングです。飲食店や居酒屋向けの魚と、スーパー向けの魚では、場所が明確に分けられています。業態によって求められる品質・規格・量目が異なるため、それぞれのニーズに応じたエリアが用意されているのです。

一方で、現場からはこんな声も聞こえてきました。タイをはじめとする養殖魚の普及が進む中、せりにかけられる魚の量は減少傾向にあるといいます。かつては天然魚が主役だったせり場も、時代の変化とともにその様相が変わりつつあります。目の前の活気の裏に、こうした構造変化が静かに進んでいることも、忘れてはならない現実です。

現場のリアル② 青果のせり

水産のせりを見学したあと、次に向かったのは青果部のせり場です。
同じ「せり」であっても、水産と青果では、その雰囲気や文化がまるで別世界でした。

野菜・果物が山積みになる圧巻の光景

まず目を引いたのは、野菜や果物がパレットにどっしりと積み上げられている光景です。この日はちょうどメロンの季節で、大きなメロンが山のように積まれていました。その量たるや、まさに圧巻です。同じ野菜でも季節によって産地が変わるという点も、今回の見学で実感として得られた発見でした。夏は信州、冬は愛知産……と産地が移り変わっていく。市場はその季節の流れを毎日リアルタイムで映し出しているのです。

「まとめ買い→分け合う」独特の仕組み

青果のせりで特徴的なのは、ユニークな取引の流れです。最初に1人のバイヤーがまとめて買い取り、その後さらに交渉して他の業者と分け合う—こうした柔軟なやり取りが、青果のせり場では日常的に行われています。水産のせりとは全く異なる文化です。

また、青果のせりで品物を落とすのは八百屋さんが多いと教えていただきました。スーパーへの供給とは異なる流通ルートが、ここには生きているのです。

「規格外」の本当の意味

今回の見学で最も大きな発見のひとつが、「規格外」に関する話でした。

青果のせりにかかるのは「規格外」の商品が中心です。しかし、「規格外」とは決して品質が悪いという意味ではありません。JAが定めた大きさや糖度などの基準を満たさなかったり、単純に流通経路の都合でJAの流通ルートに乗らなかったりした商品が「規格外」と呼ばれているにすぎないのです。

実際には、形が少し歪であっても、サイズがわずかに小さくても、味は規格品とまったく変わらない—むしろ、地元で採れたてのものが直接せり場に持ち込まれることもあり、鮮度という観点では優れていることすらあります。

「規格外は売り場に出にくいだけで、味は十分。発信を通じてその価値を伝えられる余地が大きい」

この気づきは、なごめのSNS活動の中で特に力を入れたいテーマのひとつになりました。見た目の基準で知られないままになっている食材の価値を、広く伝えていくことができると感じています。

水産と青果ではせりの文化・動き・見せ方がまったく違う——SNS上でも、それぞれの個性を活かして分けて発信すべきだと、チームで改めて確認し合いました。

現場で実感した「北部市場の魅力」

今回の見学を通じて、なごがくのメンバーは北部市場の魅力を六つのポイントに整理しました。

01 中部圏の食を支える物流拠点

毎日の食卓に欠かせない生鮮品が、ここを通って地域へ届く。北部市場は、単なる商取引の場ではなく、地域の暮らしを支える「社会インフラ」そのものです。電気や水道と同じように、私たちの日常生活を陰から支えている存在と言えます。その重要性と、現場で働く人々のプロフェッショナリズムをまずきちんと伝えていくことが、発信の土台になると感じました。

02 約5,000人が働く”食の現場”

市場で働く人たちは、どんな天候の日も、どんな社会状況の中でも、食を止めないために動き続けるエッセンシャルワーカーです。その誇りと使命感は、現場に立って初めて感じることができました。一人ひとりの想いが伝わることで、市場全体への共感が生まれると確信しています。

03 プロの目利きと判断力

仲卸のベテランが一瞬で品質・鮮度・相場を見極める姿は、まさに職人の技です。長年の経験と日々の研鑽が積み重なった判断力は、見ているだけで圧倒されます。「あのプロが選んだ魚だから安心して食べられる」——そんな信頼関係の起点となるストーリーが、せり場には溢れています。

04 早朝の非日常感が映像映え

朝3時台から動き出す市場の活気と緊張感は、それ自体が強力なコンテンツです。普段の生活では絶対に目にすることのない光景——蛍光灯に照らされたせり場、飛び交う専門用語、素早い手さばき——これらを映像や写真で切り取れば、多くの人が「見たことのない世界」として興味を持ってくれるはずです。

05 野菜・果物・魚の季節変化

産地や旬が日々移り変わる現場は、一年中コンテンツのネタが尽きません。春のタケノコ、夏のトマト、秋のサンマ、冬のカニ——季節を追いかけることで、フォロワーと一緒に一年間の食の旅をすることができます。今回の見学でも、ちょうどメロンの旬にあたっていたことが、季節感を強く意識するきっかけになりました。

06 圧巻のせり文化

水産と青果でまったく異なる作法を持つ「せり」は、それ自体がエンターテインメントです。100円単位で競り合う真剣勝負は、写真や動画でもその迫力が伝わってきます。「知らなかった世界を知る喜び」を届けられるコンテンツとして、大きな可能性を感じています。

今後も北部市場プロジェクトの活動は続いていきます。北部市場の魅力と現場のリアルを、ぜひ一緒に見届けてください。

次回の更新もお楽しみに!

南山大学 2年 新岩真帆佳